D社は、大都市近郊で大規模団地を中心としたベッドタウンとして開発された町の地主が、オーナー経営者となって15年前に創業した独立系コンビニエンスストアチェーンである。
資本金5,000万円、従業者数12名(アルバイトを除く)で、保有している9店舗はすべて直営である。
この町は開発されてから30年ほど経過しているために、当初は小さな子供たちを抱えていた住民は、現在ではその子供たちが独立して家を離れることが多く、高齢化が進んでいる。
また、この町の端には大都市につながる幹線道路があり、日夜、トラック、乗用車などの交通量が多い。
D社では店舗を、鉄道の駅前に3店舗、大規模団地のある住宅街に3店舗、そして、ロードサイド(幹線道路沿い)に3店舗、合計で9店舗展開しているが、合計で9店舗展開しているが、駅前、住宅街、ロードサイドのそれぞれの店舗で顧客層が異なっている。
駅前の店舗では、朝夕は通勤・通学の人々が顧客層となるものの、昼間はそれほどの人通りはなく、夜も8時過ぎには人通りが途絶えてしまう。
大規模団地のある住宅街の店舗では、朝夕は通勤・通学の人々が、また日中は団地内の住民がそれぞれ顧客層となる。
幹線道路沿いにあるロードサイドの店舗では、トラックや乗用車の運転手を中心とした顧客層となっている。
各店舗では店長のみが正社員であり、一般店員はアルバイトで、その雇用については社長自らが決定している。
また、商品の品揃えについても社長自らが指示を行っているが、企業規模が小さいために、各店舗の顧客層の違いによって品揃えを変えるなどの柔軟で多様な仕入れを行うことが困難であり、今のところ全店舗で画一的な品揃えになっている。
一方、日常の仕入れについては店長が在庫状況を見ながら発注している。
これまで、この地域では、D社のコンビニエンスストアのみしか存在しなかったので、ある程度の売上高と利益を確保することができていた。
ところが、平成17年度になって大手コンビニエンスストアチェーンがこの地域に店舗を展開し始め、平成17年度のD社決算では、売上高が減少するとともに、営業利益が赤字に転落した。
大手コンビニエンスストアチェーンは、今後もさらにこの地域に店舗を増やす模様であり、D社としては、この状況を十分に踏まえて、これまでの店舗展開に関する戦略の見直しをしなければならないと考えている。
すなわち、D社が保有している9店舗は前述したように3つの店舗タイプ(駅前、住宅街、ロードサイド)であるが、企業規模や企業体力を考えると、ある程度店舗タイプを絞り込んでいくことで、顧客層に対して的確に対応できる品揃えや仕入効率の向上を図りたいと考えている。
現在、導入されているPOSシステムは、発注業務のためと、売上高および売上原価算定のためだけに利用されている。そこで、これまで以上に有効活用して、顧客ニーズへの対応および仕入・在庫管理にも役立てたいと考えている。
D社では前述した直面している様々な経営課題について、特に財務的な観点から中小企業診断士に診断・助言を依頼してきた。#4
貸借対照表(単位:百万円)
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平成16年度 |
平成17年度 |
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平成16年度 |
平成17年度 |
資産の部 |
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負債の部 |
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流動資産 |
74 |
87 |
流動負債 |
43 |
47 |
現金預金 |
30 |
29 |
支払い手形・買掛金 |
25 |
28 |
商品 |
42 |
56 |
短期借入金 |
17 |
18 |
その他流動資産 |
2 |
2 |
その他流動負債 |
1 |
1 |
固定資産 |
147 |
138 |
固定負債 |
76 |
76 |
土地・建物 |
121 |
117 |
長期借入金 |
75 |
75 |
備品 |
23 |
18 |
その他固定負債 |
1 |
1 |
その他固定資産 |
3 |
3 |
負債合計 |
119 |
123 |
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資本の部 |
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資本金 |
50 |
50 |
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利益準備金 |
3 |
3 |
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別途積立金 |
4 |
4 |
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当期未処分利益 |
45 |
45 |
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資本合計 |
102 |
102 |
資産合計 |
221 |
225 |
負債・資本合計 |
221 |
225 |
注:土地・建物の取得・売却はない。また、備品の取得はない。
損益計算書(単位:百万円)
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平成16年度 |
平成17年度 |
売上高 |
985 |
965 |
売上原価 |
709 |
694 |
売上総利益 |
276 |
271 |
販売費・一般管理費 |
243 |
273 |
営業利益 |
33 |
-2 |
営業外収益 |
2 |
2 |
営業外費用 |
5 |
5 |
経常利益 |
30 |
-5 |
特別利益 |
1 |
5 |
特別損失 |
1 |
0 |
税引前当期純利益 |
30 |
0 |
法人税等 |
12 |
0 |
当期純利益 |
18 |
0 |
販売費・一般管理費の内訳 (単位:百万円)
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平成16年度 |
平成17年度 |
給与手当 |
106 |
116 |
商品廃棄損 |
56 |
74 |
広告宣伝費 |
7 |
9 |
水道光熱費 |
33 |
34 |
減価償却費 |
5 |
5 |
その他 |
36 |
35 |
合計 |
243 |
273 |
従業者構成(単位:人)
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平成16年度 |
平成17年度 |
従業者 (アルバイト除く) |
12 |
12 |
アルバイト |
20 |
22 |
注:アルバイト人数は1日8時間勤務に換算した人数。
【第1問】
D社の平成16年度および17年度の決算書の資料を用いて経営分析を行い、特に重要と思われる問題点を3つ取り上げ、問題点1、2、3ごとに、それぞれ問題点の根拠を最も的確に示す経営指標を1つだけあげて、(a)その名称を示し、(b)平成17年度分の経営指標値を計算(小数点第3位を四捨五入すること)した上で、(c)問題点とその原因について60文字以内で説明せよ。
解答欄:
【第2問】
D社のキャッシュフローについて、以下の設問に答えよ。
【設問1】
平成16年度および17年度の貸借対照表および損益計算書を用いて、平成17年度の(a)営業活動によるキャッシュフロー、(b)投資活動によるキャッシュフローおよび(c)財務活動によるキャッシュフローを計算せよ。
解答欄:
【設問2】
(設問1)の計算結果に基づいて、D社のキャッシュフローの状況を60文字以内で説明せよ。
解答欄:
【第3問】
D社では、現在の3種類の店舗タイプ(1.駅前3店舗、2.住宅街3店舗、3.ロードサイド3店舗)のうち、どのタイプに集中して店舗の再開発を行うべきかを検討している。その一環として、平成17年度の決算資料に基づいて、以下のように店舗タイプごとに売上高、変動費、個別固定費を集計し、また、全体の共通固定費を算出して採算性の検討を行うこととした。
(単位:百万円)
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売上高 |
変動費 |
個別固定費 |
共通固定費 |
1.駅前 |
225 |
187 |
72 |
– |
2.住宅街 |
315 |
209 |
71 |
– |
3.ロードサイド |
395 |
260 |
45 |
– |
合計 |
965 |
656 |
188 |
123 |
【設問1】
1.駅前、2.住宅街、3.ロードサイドの店舗タイプごとの、(a)限界利益率および(b)貢献利益率を計算せよ(小数点第3位を四捨五入すること)。
解答欄:
【設問2】
どの店舗タイプに集中すべきかの判断は、D社に関する資料から分析するとすれば、どういう点に着目して結論を出すべきか、60文字以内で述べよ。
解答欄:
【第4問】
D社では、店舗展開の戦略見直しの1つの案として、駅前店舗である3店舗を閉店してそれに関わる固定資産を売却し、これによって得られる資金6,000万円を投資して、住宅街店舗あるいはロードサイド店舗を何店舗か増加させることを検討している。そこで、以下のように増加させる店舗数ごとに投資額および今後7年間毎年得られるキャッシュフローを推定した。どのように店舗を増加させることが最適かを60文字以下で述べよ。
(単位:百万円)
増加させる店舗数 |
投資額 |
キャッシュフロー |
住宅街店舗を1店舗増加させる場合 |
20 |
7 |
住宅街店舗を2店舗増加させる場合 |
40 |
11 |
住宅街店舗を3店舗増加させる場合 |
60 |
14 |
ロードサイド店舗を1店舗増加させる場合 |
20 |
6 |
ロードサイド店舗を2店舗増加させる場合 |
40 |
11 |
ロードサイド店舗を3店舗増加させる場合 |
60 |
13 |
解答欄:
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